語彙、足りていますか?——「まとめてください」の〇〇を、感覚で選んでいた

ai Aug 23, 2026
明るい木の机で、手が白いカードを地図のように並べている場面(2026-08-20)

AIに「〇〇でまとめてください」と頼むとき、私は〇〇を感覚で選んできました。思っていた形と違えば、言葉を足して直す。それで作業は進んでいました。

ただ、どの言葉をどんなときに選ぶのかは、自分の中でも明確な基準になっていませんでした。そこで今回は、普段の使い分けを、「何のために使うか」「何を残すか」「どう並べるか」の三つで整理してみます。

「〇〇でまとめて」の〇〇は、すでに使っていた

AIとの長い会話の区切りで、私はよく「ここまでをまとめてください」と頼みます。

ただ、いつも同じ頼み方をしていたわけではありません。

「論点別にまとめてください」
「次のセッションへの引き継ぎ用にしてください」
「重要な決定を中心に整理してください」

そのときに合いそうな言葉を、「まとめて」の前後に足してきました。

返ってきたものが思っていた形に近ければ、そのまま使う。違っていれば、

「時系列ではなく、論点ごとにしてください」
「結論だけでなく、そう決めた理由も残してください」
「これまでの説明より、次に何をするかが分かる形にしてください」

と修正する。

私は、まとめ方の違いを知らなかったわけではありません。

違いを感覚では使い分けていたけれど、どのまとめ方を、どんなときに選ぶのかという地図を持っていなかった。

今回したかったのは、新しいまとめ方を発明することではありません。

これまで感覚的に行ってきた使い分けを、次にも使える基準として言葉にすることでした。

「まとめる」の中では、別の仕事が行われている

同じ「まとめてください」でも、何のために使うかによって、必要な仕事は変わります。

以下では、情報に対して行う処理と、最後に残したい成果物の型を、同じ表に置いています。実際の指示では、どちらも「〇〇でまとめてください」の〇〇として使うからです。

図1|目的別に選ぶ「まとめ方」の型

短時間で全体をつかみたい

頼む仕事/成果物の型要約・エグゼクティブサマリー

主に残るもの結論と重要事項

複雑な話の全体像を見たい

頼む仕事/成果物の型論点整理・構造化・階層化

主に残るもの論点同士の関係

何を追究していたか知りたい

頼む仕事/成果物の型中心質問の抽出・問いの変遷

主に残るもの問いと、その転換点

起きた順番を残したい

頼む仕事/成果物の型時系列整理・経緯整理

主に残るもの出来事と変化の順序

何を決めたか残したい

頼む仕事/成果物の型決定記録・Decision Memo

主に残るもの決定、理由、却下した案

次の会話で再開したい

頼む仕事/成果物の型引き継ぎサマリー・チェックポイント

主に残るもの目的、現在地、未解決事項、次の一手

別の場面でも使いたい

頼む仕事/成果物の型原則化・知識化・フレームワーク化

主に残るもの再利用できる考え方や型

外に出せる形にしたい

頼む仕事/成果物の型記事化・媒体別編集

主に残るもの読者と媒体に合った成果物

元になる会話や資料は同じかもしれません。

けれど、残すものも、捨てるものも、並べ方も違います。

たとえば、会議の内容を「要約」するなら、主要な発言と結論が分かれば足ります。

しかし、「決定記録」にするなら、結論だけでは足りません。

なぜそう決めたのか。
ほかにどんな案があったのか。
なぜその案を採らなかったのか。
決定によって、どの文書や作業が変わるのか。

そこまで残さなければ、後から同じ判断を復元できません。

一方、「次のセッションへの引き継ぎ」であれば、議論の細かな経緯をすべて残す必要はありません。

必要なのは、現在有効な決定、今の進行状態、未解決事項、そして次に始める場所です。

同じ内容でも、目的が変われば、正しいまとめ方も変わります。

長いセッションで欲しいのは、要約ではなく「現在地」のことがある

長いAIセッションを次の会話へ渡すとき、この違いが特にはっきりします。

「ここまでを要約してください」と頼めば、何を話したかは短くなります。話題の流れも、主要な結論も分かります。

ただ、それだけでは、次のセッションがすぐに続きを始められないことがあります。

次に必要なのは、会話のあらすじではなく、

  • 何を目指しているのか
  • 現在どこまで進んでいるのか
  • 何が確定しているのか
  • どの前提や制約が、今も有効なのか
  • 何が未解決なのか
  • 次に何から始めるのか

という、現在の作業状態だからです。

要約は、過去に何があったかを短くします。

チェックポイントは、現在どこにいて、次にどこへ進むかを残します。

引き継ぎは、次の人や次のAIが、同じ判断の続きから始められるようにします。

私は以前から「引き継ぎ用に」と頼むことはありました。

ただ、その中に何を必ず残すのかまでは、毎回同じ基準になっていませんでした。そのため、返ってきたものを見てから、

「決定事項を追加してください」
「未解決のものを分けてください」
「次の一手を具体的にしてください」

と直していました。

この修正を繰り返す中で、私が本当に欲しかったのは、長い会話を短くした文章ではなく、次のセッションが現在地を復元できる記録なのだと分かってきました。

修正の言葉を並べると、三つの基準が見えた

思っていたものと違ったときに、私が加えていた言葉を並べてみると、修正していた場所は三つに分かれました。

時系列ではなく、論点ごとにしてください。

これは、情報の並べ方を変えてほしいという指示です。

結論だけでなく、そう決めた理由も残してください。

これは、残す情報の範囲や深さを変えてほしいという指示です。

過去の説明ではなく、次に何をするかが分かる形にしてください。

これは、成果物を使う目的を変えてほしいという指示です。

私は、出力を見てから自分の意図を言い直していました。

言い換えると、AIとの修正のやり取りを通じて、自分の中にある暗黙の基準を、一つずつ外へ出していたことになります。

だから、修正を繰り返していたこと自体が間違いだったとは思いません。

最初から欲しいものを完全に説明できないこともあります。実物を見て初めて、「違う」と分かることもあります。

まず使う。
ずれを観察する。
なぜ違うと感じたのかを言葉にする。
次から使える基準として残す。

私にとっての標準は、先に作って実務を従わせるものではなく、実務で何度も確かめた違いを、後から再現できる形にしたものです。

三つを決めると、「まとめて」の指示が変わる

整理すると、「〇〇でまとめてください」と頼む前に見る場所は、次の三つです。

何のために使うのか。理解するためか、判断するためか、次へ引き継ぐためか、外へ出すためか。
何を残すのか。結論だけでよいのか。理由や却下案も必要なのか。前提、例外、未解決事項、次の行動まで残すのか。
どう並べるのか。時系列か、論点別か、重要度順か、原因と結果か、上位概念と下位概念か。

たとえば、

次のセッションで作業を再開するために、現在有効な決定事項・前提・未解決事項・次の一手を残し、論点別のチェックポイントとしてまとめてください。

と頼めば、

  • 何のために使うか:次のセッションでの再開
  • 何を残すか:決定事項、前提、未解決事項、次の一手
  • どう並べるか:論点別
  • 最後に残す型:チェックポイント

が分かります。

長いプロンプトを書いたから明確なのではありません。

欲しいものの名前と、それを選ぶ基準が揃っているから明確なのだと思います。

語彙は、AIを動かす呪文ではない

「チェックポイント」や「Decision Memo」といった言葉を知れば、AIが自動的に正しい成果物を作ってくれるわけではありません。

同じ言葉でも、人によって想定する中身は違います。

最初に出てきたものを見て、修正する作業がなくなるわけでもありません。

それでも、名前を持つことには意味があります。

「決定記録を作る」と名前をつければ、結論だけではなく、理由や却下案も必要だと考えられます。

「チェックポイントを作る」と名前をつければ、過去の詳しい説明より、現在地と次の一手を優先できます。

「中心質問を抽出する」と名前をつければ、話題の一覧ではなく、その区間で何を追究していたのかを見るようになります。

名前は、単なるラベルではありません。

何を残し、何を落とし、どの順番で並べるかを決めるための境界線になります。

語彙を増やすことは、AIへの命令文を増やすことではありません。

自分が今、どの仕事を頼もうとしているのかを見分けるための地図を持つことです。

おわりに

私は、「要約」「構造化」「引き継ぎ」といった言葉を、まったく知らなかったわけではありません。

足りなかったのは、単語の数だけではありませんでした。

それぞれの言葉を、どんな目的で、何を残すために、どのように使い分けるのかという関係でした。

これまで私は、その関係を感覚で選び、出てきたものを見ながら修正していました。

その作業を振り返ってみると、私の中には、すでにいくつもの判断がありました。ただ、それらが点のままで、地図になっていなかった。

語彙を増やすとは、難しい言葉をたくさん覚えることではありません。

感覚的に区別していた仕事に名前をつけ、次にも使える判断基準にすることです。

AIに何をしてもらうかを考える前に、こちらが仕事に名前をつける。

これも、先に整えることの一つなのだと思います。

次に「まとめてください」と書くとき、少しだけ立ち止まってみる。

何のために使うのか。
何を残したいのか。
どう並べると使いやすいのか。

欲しいものに、私はどんな名前をつけているだろうか。

もしかすると足りないのは、AIの性能でも、プロンプトの長さでもありません。

こちら側の語彙と、その使い分けの地図なのかもしれません。

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