AIには、学ぶ順番があります——三年かけて土台になったことを、七回に並べ直しました

ai Jul 26, 2026
明るい机の上で、手が七枚の白い紙片を順番に整えている

最近、AIについて聞かれることが変わってきました。

自動で動く仕組みは作れるのか。エージェントというものがあるらしい。Claude Codeというのを聞いた。そういう質問が増えています。

尋ねてくださる方の何人かは、AIをまだ使ったことがありません。名前は知っている。話題も知っている。けれど、自分では触っていない。いま目立っているのが自動化やエージェントの話なので、そこから気になるのは自然な流れです。

仕組みは、一回分の依頼と確認の上に乗っています

自動で動く仕組みへ進むと、AIに頼む回数が増え、処理がつながり、人が毎回は目を通さない部分が生まれます。

一回分の依頼と確認が固まっていれば、回数を増やしても、どこを確かめればよいかが残ります。固まる前に増やすと、動いてはいるのに、質を見る場所がなくなります。

私は前の仕事で、長く品質保証をしていました。そこで身についたのは、作るより先に、何をもって合格とするかを決める習慣です。決めてあれば、確かめられます。AIでも同じでした。

三年前に教わったことが、いまの土台になっています

私がAIを学び始めたのは、ChatGPTが出てすぐの頃です。最初に教えてくれた実務家がいました。ここでは、公開できる範囲で、そのとき受け取ったことを書きます。

教わったのは、素朴なことでした。何を目的にするか。材料をどこまで渡すか。出てきたものをどう確かめるか。当時のAIは今ほど賢くありませんでしたから、こちらが丁寧に扱わないと、使えるものが返ってきませんでした。

賢くなれば、その手間は要らなくなる。そう考えていました。

実際は逆でした。

モデルが強くなるほど、曖昧な頼み方でも、それらしいものが返ってきます。自然に読めるぶん、元の材料と照らし、どこまで受け取ってよいかを確かめる技術の値打ちが上がります。

三年前に教わったことは、古びたのではなく、土台のほうへ移りました。

その時々の順番が、いくつもありました

教わり方は、必要になったときに、必要なことを、というものでした。一つ一つに、その場の筋が通っています。当時の私には、それが一番早い渡し方でした。

自分で使う分には、それで足ります。人に渡すときには、最初から最後までたどれる一本の順番が要ります。

そこで、初めての方が、最初の一件を七回で最後まで試せる順番に並べ直しました。

一回目は、短い材料を渡して、最初の一枚を作ります。二回目は、同じ材料のまま仕上げ方だけを変えて、答えが変わるところを見ます。三回目は、誰が、何のために使う一枚かを決めます。四回目は、五つの欄で頼み方を組み立てます。目的、材料、条件、仕上がり、確認です。五回目は、材料にあることと、ないことを分けます。六回目は、一か所だけ直して、前と後を比べます。七回目は、別のメモで試して、次にも使える形で残します。

最初の一件を、頼み、確かめ、直し、別の材料でも試すまでの七回に分けて示します。

図1|最初の一件を七回で頼み、確かめ、残す順番

短い材料で最初の一枚を作り、仕上げ方、用途、五つの欄、材料の内外、一か所の修正、別材料での再試行へ進む七回の工程図
注:本文で説明した七回を、初めて使う方の実践順として整理した工程図。
出典:本記事の本文をもとに鳴海貴慶作成。

ここで見ておきたいのは、一回ごとに新しい機能を覚えるのではなく、同じ一件を確かめられる形へ近づけていることです。

並べる考え方は一つです。安全な材料で、先に手を動かす。 分かってから始めるより、実際の出力を見たほうが、何を伝え、どこを確かめるのかが具体的になります。

七回を終えると、AI依頼カード、最初の出力、元材料との確認、一欄だけを直した前後の記録、別の材料で試した結果など、九つの実物が手元に残ります。感想ではなく、自分で出したものと、その変化の記録です。

一冊になりました

『AI入門2026|はじめの一歩編』といいます。付属の架空材料だけを使い、AIに頼み、確かめ、一か所だけ直し、別の材料でも試す本です。

始める前に、範囲を三つ決めます。付属の架空材料だけを使う。個人、顧客、機密、組織の非公開情報を入れない。練習で出たものを、送信、公開、約束、意思決定に使わない。

範囲を先に区切るのは、情報を入れてよいかどうかの判断と、AIへの頼み方を覚える作業を、いったん分けるためです。まずは内容を公開しても困らない材料で、依頼と確認の流れに集中します。

使ったことがない方が最初に決めかねるのは、何を入力してよいかです。その慎重さは、仕事で使う道具に対する自然な判断です。だからこの本では、実際の仕事情報を入れずに練習できる形にしました。

四回目に使う五つの欄——目的、材料、条件、仕上がり、確認——は、この先も残ります。仕組みを作る段階へ進んでも、五欄は捨てる下書きではなく、任せる範囲と確かめる場所を決める基準になります。

本とワークブックを置いています

『AI入門2026|はじめの一歩編』と、書き込み用のワークブックを無料で公開しています。

メールアドレスの登録は要りません。ページを開くと、そのまま本とワークブックを開けます。

七回終えると、付属の架空材料で、頼み、元材料と照らし、一か所だけ直し、別の材料でも試した記録が残ります。自分の仕事の中から、この先試してみる一枚を選び、その名前も書き留めます。

ここで作るのは、「一件で使えた」を自分で確かめた状態です。繰り返す仕事として任せられる状態には、別の設計が要ります。そこまで終えたとは言いません。

まず一件を、自分の手で頼み、確かめ、残す。仕組みの話は、その土台ができてからです。

AIと人の協働について、構造から考えた記録を、ほかにも書いています。

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