AIの新しいツールを、全部追いかけなくていい理由

ai 業務dx Oct 12, 2026
使い慣れた藍色の鉛筆を手に取る、窓辺の木の仕事机

AIの新しいサービスや機能の発表が、毎週のように届きます。「これも覚えないと、取り残されるのでは」と感じている方は、少なくないと思います。

そこで、話題になった新しいツールの「できるようになったこと」を、いつも使っているChatGPTで試してみました。結論を先に書くと、三つの場面のうち二つは、新しいツールを覚えなくても足りました。一つは資料の渡し方を変えることで、もう一つはChatGPTの作業向けの機能を使うことで足りています。残る一つは、試作までなら足りるという結果でした。

この記事では、その渡し方と、ご自分の資料で一度確かめる方法をお伝えします。

新しいツールを覚える前に、今の道具で一度試す

新しいツールを仕事に入れるには、使い方を覚えるだけでなく、料金や契約を確かめ、仕事の資料を渡してよいかを判断する手間がかかります。一つなら小さな手間でも、発表のたびに繰り返すと、本業の時間が削られていきます。

そこで私は、新しいツールの発表を見たら、まず「その発表でできるようになったことは、今の道具では本当にできないのか」を確かめています。今の道具で足りれば、覚える手間は省けます。足りなければ、そこで初めて、新しいツールを覚える理由がはっきりします。

試したのは、仕事でよくある三つの場面です

10月のはじめに、画像の手直し、資料の検索、WordやExcelの作成を助ける新しいサービスの発表が続きました。それぞれを仕事の場面に置き換えて、ChatGPTで試した結果が次の表です。お客様の資料は使わず、試すために作った架空の資料で、各場面を一回ずつ確かめています。

表1|三つの場面で確かめたこと
仕事の場面 ChatGPTで足りたか 変えること
図や表の入った資料を読ませて、質問に答えさせる 渡し方を変えれば足りた 図に意味があるページは、画像でも渡す
報告書、計算表、説明用のスライドをまとめて作らせる 足りた。ただし確認は欠かせない 数字とページを自分の目で確かめてから使う
チラシや資料の表紙を部分的に直す 試作なら足りた 元の画像を残し、直すたびに見比べる

いちばん効いたのは、図の入った資料を画像でも渡すことでした

PDFを渡すと、ChatGPTは中の文字を取り出して読むことがあります。そのとき、矢印や線で示した「何と何がつながっているか」は消えてしまいます。

試した資料には、「どの案件を誰が担当するか」を矢印で結んだ図がありました。PDFのまま渡すと、ChatGPTは担当者を答えられず、推測もせずに答えを保留しました。同じページを画像として渡すと、矢印を正しくたどり、別の資料に書いた曜日と組み合わせて「この案件の受け取りは火曜日」と答えました。資料にないことを聞いた質問には、どちらの場合も「資料にない」と答えています。

同じことが、皆さんの手元にある資料でも起きている可能性があります。業務の流れ図、組織図、担当表、手書きのメモを撮った写真など、図に意味がある資料ほど、文字だけでは伝わっていないことがあります。講演や会議の記録も同じです。私の講義の記録でも、話した言葉の書き起こしだけでなくスライドの文字も渡すと、具体例にたどり着けました。

新しい検索サービスを探す前に、そのページを画像でも渡してみてください。それだけで届くことがあります。

書類一式も作れました。開いて確かめるまでは分かりません

架空の会社の業務データを渡し、「新しいやり方を試すべきか」を判断するための報告書、計算表、説明用のスライドを作らせました。

ChatGPTの作業向けの機能を使い、丁寧に考える設定にすると、元のデータを崩さず、前提の数字を変えれば計算も正しく変わる一式ができました。WordもExcelもPowerPointも、そのまま開いて直せる形です。

一方、普通のチャットで頼んだときは、計算式のない表や、根拠のない数字が混ざりました。どちらも見た目はきちんとした書類の形をしていて、違いは開いて確かめるまで分かりませんでした。

使う前には、次の三つを確かめてください。

  • 前提の数字を一つ変えて、計算がついてくるか
  • 報告書やスライドの数字が、計算表と合っているか
  • 印刷やPDFにしたとき、全ページが読める大きさか

画像の手直しは、試作までにとどめます

「上着の色だけ変えて、他はそのままに」と頼むと、色は変わりました。ただ、残したかった編み目の模様まで変わり、触っていない顔や背景も少しずつ描き直されていました。

チラシの試作や資料の表紙の手直しなら、これで十分です。商品の写真や人物の顔のように、少しでも変わると困るものは、元の画像を残して、直すたびに見比べてください。一緒に試した新しいサービスの側では、細部まで同じかどうかを確かめきれませんでした。

ご自分の資料で、一度試すなら

図や表に意味がある資料を一つだけ使います。

  1. 流れ図、担当表、組織図など、矢印や線に意味がある資料を選びます。社外に出せない資料なら、名前を伏せた版を使ってください。
  2. 図を見ないと答えられない質問を一つ、資料に答えのない質問を一つ用意します。
  3. PDFのまま渡して、「根拠のページを書き、資料にないことは資料にないと答えてください」と添えて質問します。
  4. 新しい会話で、同じページを画像(スクリーンショットで構いません)にして、同じ質問をします。

二つの答えを、元の図と見比べてください。画像のほうだけが正しければ、その資料は画像も添えて渡せば十分です。どちらも正しければ、今の渡し方のままで大丈夫です。どちらも間違えたときに初めて、新しいツールを探す理由ができます。

今回確かめていないこと

今回は、架空の小さな資料で一度ずつ試した結果です。人が使って、手間がどれだけ減ったかは測っていません。大量の資料から探す場合や、録画の映像や音声まで使う場合は、新しいツールが必要になるかもしれません。

新しいツールには、もちろん価値があります。必要になったときに覚えればよいと分かるだけで、発表のたびに焦らずに済みます。

ご自分の資料と仕事について、どこまでが今の道具で足り、どこから新しい道具が要るのかを、実際の資料で一緒に確かめるご相談を、QAILaboratoryで受け付けています。ご関心があれば、こちらをご覧ください。

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きっかけになった発表

いずれも提供元の公式の説明です。

  • Geminiの画像生成(Google):有料プランで新しい画像モデルを使える。
  • EmbeddingGemma 2(Google):文章だけでなく、画像・音声・動画もまとめて検索できるようにする仕組み。
  • Aru(QueryPie AI):Windowsで動き、Officeの文書を作ったり直したりできるAIアプリ。

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