一枚のコーヒー写真は、どこまで広告になるか ― 動画生成AIで確かめたこと
Jul 16, 2026動画生成AIで、印象的な映像を一本つくるのは、以前より身近になりました。
では、撮影用ではない一枚の写真から、商品の形を保ち、カメラと光と文字まで整えた短い広告映像をつくろうとすると、どこが難しくなるのでしょうか。
木のテーブルに置かれたコーヒーカップの写真を使い、実際に試しました。題材は、自分の名前をつけた架空のブランド「QAI COFFEE」です。
Google Flowでつくったのは、8秒の縦型映像です。ここでは、きれいにできたところだけでなく、生成らしさが残ったところも含めて記録します。
始まりは、日常の一枚
使ったのは、木のテーブルに白いカップとソーサーが置かれた写真です。撮影用に用意した商品写真ではありません。周囲には別の食器の一部も写り込んでいます。
この写真を「商品の基準」としてGoogle Flowに読み込ませ、カップ、ソーサー、黒いコーヒー、木のテーブルを残しながら、縦型の広告らしい画面へ変えていきました。
最初に決めたのは、何を加えるかよりも、何を守るかです。
横向きの写真は、そのまま縦になるわけではない
元の写真は横向きです。完成させたい映像は9:16の縦向きでした。
縦にするだけなら、左右を切れば終わります。けれども、それではカップとソーサーの関係や、木のテーブルの奥行きが失われることがあります。そこで、写真を単純に切り抜くのではなく、カップを中心にした縦の構図として組み直すように指示しました。
添付した写真を、商品の正確な参照として使用してください。
白い陶器のカップ、ソーサー、黒いコーヒー、取っ手の位置を維持してください。
人物、手、余計な食器、文字は追加しないでください。
完成映像では、背景が朝の光の入る静かな店内へ変わり、カメラがカップへゆっくり近づきます。元写真と同じものを残しながら、画面の役割だけを変える感覚でした。
参照画像は、映像をつなぎ止める錨になる
文章だけでカップを説明すると、似ているけれど別のカップになることがあります。取っ手の大きさ、カップの高さ、ソーサーの縁、コーヒーの量。小さな違いでも、商品として見ると気になります。
今回のように、一つの商品を映像の中で保ちたいときは、同じ写真を参照素材として使うことが大切でした。
ただし、参照画像を入れれば、すべてが固定されるわけではありません。指示文には、変えたい部分と、変えたくない部分の両方を書きます。
カップ、ソーサー、コーヒー、木のテーブルは維持してください。
朝の光と、ゆっくりしたカメラ移動だけを加えてください。
何を作るかだけでなく、何を守るかを書く。指示の空白を減らすほど、確認する場所も見えやすくなりました。
一本だけ生成して、残すかどうかを決める
最初から複数案を出さず、出力数は一本にしました。構図と動きが成立するかを確かめる段階では、候補の多さよりも、一つの結果を丁寧に見る方が判断しやすかったからです。
完成した映像は、8秒、720×1280の縦型ワンショットです。カメラはゆっくり近づき、わずかに回り込みます。
確認したのは、次の点です。
- カップとソーサーの形が途中で崩れていないか
- 取っ手の位置が不自然に変わっていないか
- コーヒーの表面が急に揺れたり消えたりしないか
- カメラの動きが急すぎないか
- 指定していない人物や物が現れていないか
- 湯気が途中で不自然な形になっていないか
動画を再生するだけでは、細かな変化を見落とします。そこで、0.5秒、4.5秒、6.2秒付近を静止画にして並べました。時間を止めると、保てた部分と、生成らしさが強く出た部分が分かります。
ブランド名は、映像とは別に加える
映像そのものが整ってから、「QAI COFFEE」というブランド名を画面下部に加えました。表示はおよそ5秒後からです。
文字を映像生成と同時に任せると、つづりや形が崩れることがあります。今回は文字を別の工程に分けたことで、映像の修正と文字の修正を切り分けられました。
文字を加えたあとに確認したのは、つづり、位置、大きさ、商品との重なり、表示時間です。短い映像ほど、最後の数秒の読みやすさが全体の印象を左右します。
広告として、どこまでできたか
一枚の写真から、縦型の広告らしい映像をつくるところまではできました。カップとソーサーの関係は保たれ、朝の光、ゆっくりしたカメラ移動、ブランド名によって、元写真とは異なる役割を持つ画面になっています。
一方で、そのまま公開用の完成広告と呼ぶには、仕上げが残りました。
湯気は途中から太くなり、規則的な渦を描きます。自然な湯気というより、生成された演出に見える瞬間があります。画面右下には生成を示す印も残っています。解像度も720×1280なので、使用先によっては書き出し条件を見直す必要があります。
つまり、試作としては十分に伝わる。けれども、自分の名前で広告として出すなら、湯気、生成印、文字、書き出し品質を、もう一度確認する。その境界も、今回の成果でした。
記録として残った、五つのこと
1. 普通の写真でも、基準にはできる
撮影用の写真でなくても、商品が分かりやすく写っていれば、参照素材として使えます。ただし、周囲の写り込みまで引き継ぎたいのか、消したいのかは決めておく必要があります。
2. 横から縦へ変えるときは、残す関係を決める
縦向きへの変換は、単なる切り抜きではありません。商品、器、背景、余白のうち、何を残すかを先に決めます。
3. 最初は一本だけ生成する
構図と動きを確認する段階では、出力数を増やさず、一つの結果を細かく見ます。残す理由と直す理由が言葉になります。
4. 文字は、映像と分けて整える
映像と文字を同時に完成させようとせず、映像を決めたあとに文字を加えます。修正の影響範囲が小さくなります。
5. 再生だけでなく、止めて確認する
形の揺れや不要な物体は、動いていると見落とします。数か所を静止画にし、商品、背景、文字を比べることで、公開前の判断がしやすくなります。
おわりに
動画生成AIは、一枚の写真から、短い時間で新しい見せ方を提案してくれます。
一方で、何を商品の基準にするか、どの変化を許すか、どの結果を残すか、そして公開してよい品質かを決めるのは、人の仕事として残りました。
生成することと、世に出すことは同じではありません。
AIが映像を整えたあとに、「これは、自分の名前で出してよいものか」と一度立ち止まる。その確認があることで、生成結果は、伝えるための作品に近づいていくのだと思います。
今回の操作の流れ、使用した指示文、確認した項目は、実践手順書として円卓(QAIラウンドテーブル)の中にまとめています。必要なところがあれば、気になる箇所からご覧ください。
(利用画面や機能の名称は、更新で変わることがあります。制作の際は、Google Flowの画面に表示される最新の内容も、あわせてご確認ください。)
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