Officina Vitae

記録 アート 音楽 円卓 研究所 お問合せ
ログイン
← Back to all posts

QAILaboratory|その前に、任せる範囲だけ決める

Aug 02, 2026
Connect

こんにちは、QAILaboratoryの鳴海です。

今週、主要なAI研究所に勤める研究者1,100人以上が、フロンティアAIの開発ペースを意図的に落とすよう米国政府に求める公開書簡に署名しました。書簡は、AIがすでに自らの開発を自動化しつつある段階に近づいており、人間の側が安全に追随できる保証はないという認識を示しています。

こうした話を聞くと、AIの進化はもう誰にも止められない勢いで進んでいて、自分にできることは何もない、という気持ちになりがちです。反対に、大きな研究所の内輪の話として、自分の仕事とは関係のない世界の出来事のように片付けてしまうこともあります。どちらも少し違うと思います。今回の書簡が示しているのは、作っている本人たちが「どこまで任せてよいか」に迷い始めているという事実で、これは組織の規模にかかわらず、AIを使う人全員に共通する迷いだと考えています。

■ 今週、目を留めておくとよさそうな一つ

目を留めておいてよいのは、開発の速さそのものより、「作る側が自分たちの手綱を疑い始めた」という兆しのほうだと思います。普段、AIをめぐる懸念は外側の評論家から出ることが多いのですが、今回は内側からの声である点が違います。何を作るときに配慮するか、途中経過をどこまで見せるか、そして実際に動かしてしまってからの責任をどう持つか。この三つの場面で気を配る必要があるという感覚は、大きな研究所も、一人で仕事をする自分たちも変わらないのだと思います。

■ ほとんどは、追わなくて大丈夫

一方で、書簡が具体的にどんな政府の枠組みを求めているか、各国の規制が今後どう決まっていくか、といった話は、追わなくて大丈夫だと考えています。あれは数年単位で決着する話で、今週読んだ量が、自分の現場の判断を速くしてくれるわけではありません。どのAIモデルが一番賢いかという比べっこも同じです。性能の順位は各社が競って更新してくれるので、そちらは待っていれば向こうからやってきます。急いで追いかける必要はありません。

■ もし決めるなら、ここだけ

もし一つだけ決めるなら、AIに仕事を任せるときに「ここから先は必ず人が確認する」という一本の線を、慌てていない今のうちに書いておくことだと思います。慌てているときに引いた線は、たいてい甘くなります。目安は三つで足りると思います。今の仕事のどこまでを、実際にはもうAIに任せているか。任せた結果を、最後に誰の目が通っているか。そして、想定していない動きをしたときに、すぐ止められる形になっているか。この三つを一度紙に書いておけば、次にどんな見出しが騒がしくなっても、そのたびに慌てて線を引き直さずに済みます。

騒ぎはたいてい一週間もすれば静かになりますが、手元に残るのは、その紙一枚のほうだと思います。

QAILaboratory

代表 鳴海貴慶

HP https://qailaboratory.narumitakayoshi.com

ブログ https://www.narumitakayoshi.com/blog/

LinkedIn https://www.linkedin.com/in/takayoshi-narumi-9869a527a/

返信

会話に参加する
t("newsletters.loading")
読み込み中...
QAILaboratory|AIに任せた仕事は、毎週、無作為に三件を選んで見直すことにしています
こんにちは、QAILaboratoryの鳴海です。金曜の午後、事務所の机で、今週AIに任せた仕事の一覧を開く場面を思い浮かべてください。全部を見直す時間はなく、かといって一度も見ないのも落ち着きません。今週は、その見直しを「無作為に三件だけ選ぶ」と決めておく話をします。米国のAIニュース会社The Rundownは、社員が20人強の完全リモートの会社です。同社のRowanは、10月16日号のコラムで、毎週金曜に「デジタル工場巡回」をしていると書いています。コラムによると、対面の会社なら社長が工場の床を歩いて、誤りやのろい引き継ぎに気づきます。床のない会社では、サポートの問い合わせ、記事、経理項目などから無作為に選び、同じ観点で見直すそうです。観点は、何が遅いか、どの引き継ぎをなくせるか、何を自動化すべきか、の三つです。今週のコラムでは、その準備をAIに任せたと書かれています。Clau...
QAILaboratory|新しい道具の数より、AIが作る画像の中の文字を、誰が入れるかを見ています
こんにちは、QAILaboratoryの鳴海です。今週は、新しい道具の数を追うより、AIに画像を作らせるとき、画像の中の文字を誰が入れるかのほうを見ています。The Rundown AIの10月12日号は、1枚の商品写真から正方形・縦・横の3つの広告画像を作る手順を紹介しました。使うのは、Googleの制作ツールGoogle Flowで使える画像生成AI「Nano Banana 2.1」です。最後に短い見出しを足したら、すべての言葉を確かめ、ダウンロードしたファイルで商品の細部・切り取り・文字を見てから使うよう書いています。同号は、さらに、各画像の文字なしの版を残し、正確なブランドのフォントとロゴは、いつもの制作ツールで足すことを勧めています。画像をAIに作らせるなら、見出しも店名も電話番号も、一度に入れてもらうのがいちばん早いと思われがちです。ですが、画像の中の文字は、見る人が最初...
QAILaboratory|AIを使わない人の意欲を測る前に、最初の一回を横で一緒にやることを決めています
こんにちは、QAILaboratoryの鳴海です。 先週は、AIを使わない人の意欲を測るより、まだ一度も使っていない身近な一人と、最初の一回を横で一緒にやることを、先に決めています。 Harvard Kennedy SchoolのShorenstein Centerは、米国の成人5,400人超への調査などをもとに、AIの使われ方の男女差をまとめました。The Rundown AIの10月16日号によると、AIを一度も使ったことがない人は女性29%、男性22%です。ただし、ネットの閲覧記録では試した人の割合に大きな差はなく、差が出たのは使う時間でした。 同じ号によると、働いている人でAIの研修を受けていない人は女性64%、男性49%でした。同調査は、研修と励ましが、男女どちらでも使う頻度と自信の高さに結びついているとしています。 AIを使わない人は、関心が低いか、機械が苦手なのだろうと...

QAI Laboratory

現場視点で読み解く、生成AI×品質技術×業務最適化の実践知。AIの情報が多すぎる中で「今週どれを追い、どれは追わなくていいか」を、鳴海の視点でお届けします。生成AIを実務に活かしたい方へ。 毎週の配信: 月:AI全般 ― 今週の注目の動き 水:AIツール ― いま試す価値のあるもの 金:海外企業のAI活用 ― 事例と自社への活かし方 日:物語 ― 現場の一場面を描いた読み物

Officina Vitae

記録 円卓 研究所 お問合せ プライバシーポリシー X Facebook Spotify アート 音楽 特定商取引法に基づく表記
© 2026 Takayoshi Narumi