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QAILaboratory|「壊れたらどうするんですか」

Aug 07, 2026
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こんにちは、QAILaboratoryの鳴海です。

火曜の朝、設計事務所を営む経営者は、顧問税理士の前で湯呑みを両手で包んだまま、しばらく黙っていた。「同業の何社かは、もう使い始めているみたいで。うちも、そろそろと思うんですが」。声が少し震えていた。

税理士のデスクには、経営者が持ち込んだ新聞の切り抜きが広げてあった。大手のAIが軒並み値下げしたという見出しが、三つ並んでいる。土曜の夜、これを読んでから、経営者はほとんど眠れていなかった。今この値段のうちに始めるべきなのか、それとも様子を見るべきなのか、答えの出ない自問を繰り返していた。

「何が一番、怖いんですか」。税理士が聞いた。

「壊れたらどうするんですか。図面も、見積もりも、社員の評価も、全部持っていかれるようで」。経営者はそう言って、湯呑みを机に置いた。指先が少し冷えていた。頭の中では、「今すぐ決めなければ」という焦りと、「何かを失うかもしれない」という不安が、順番に押し寄せては引いていった。

税理士は少し考えてから、渡す範囲を最初に決めておけばいいこと、あとから取り消せる形にしておけばそれほど怖くないことを、ゆっくり説明した。難しい設定の話ではなく、最初に何を見せるかを、自分で選べるという話だった。全部を渡すか、何も渡さないかの二択だと思っていたが、実はその間に線を引けるのだと、経営者はそのとき初めて気づいた。

事務所に戻った経営者は、引き出しの中の書類を一つずつめくった。顧客の図面、見積もりの原価、社員の評価。どれも、今はまだ触れない気がした。最後に、先週の会議メモが目に留まった。取引先の名前も金額も出てこない回だった。これだけなら、渡してみてもいい気がした。試すのは、まずその一枚だけで十分だった。

その日の夜、妻に聞かれた。「結局、何を渡すことにしたの」。答える前に、経営者は鞄からメモを取り出して、もう一度読み返した。

QAILaboratory

代表 鳴海貴慶

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