QAILaboratory|真似したいのは、成果のほうでしょうか
こんにちは、QAILaboratoryの鳴海です。
今週、HeyGenの共同創業者が、育児休業のあいだ顧客対応を自分のAIクローンに任せた8週間の記録を公開しました。2,741件の見込み客と通話し、132件が有料顧客になり、約300万ドル規模の商談が37件開いています。同じ期間に、存在しない4,800ドルのプランを創作して提示した例や、社内向けの対応メモをそのまま顧客にメールで送った例も起きていました。
こういう記事を読むと、目が行くのは前半の数字のほうです。うちでも同じことができるだろうか、と考えたくなります。ただ、真似できる部分と真似できない部分は、はっきり分かれていると思っています。数字のほうは、その会社の商材と顧客リストと知名度の上に立っているので、そのまま持ってくることはできません。
■ 今週、目を留めておくとよさそうな一つ
目を留めておくとよさそうなのは、事後の直し方のほうだと考えています。この会社が最終的にやったのは、AIを賢くすることではなく、権限をAIの手の届かない場所へ移すことでした。値段を作れる場所、社外に文章を出せる場所、予定を約束できる場所。逸脱が起きたのは、いずれもその三つでした。これは規模を問わず真似ができます。同じ週のPwCの調査では、金融業界の役員の86%が「AIスキルの研修は多くの新規採用でMBAに勝る」と答える一方、77%が「AI投資の多くに測定可能な成果が出ていない」と答えています。この二つは矛盾していないと見ています。手応えがあることと、測れることは別で、測れないうちは、事故のほうが先に目に見える形で出てくるからです。
■ ほとんどは、追わなくて大丈夫
一方で、今週並んだ大きな金額の話は、追わなくて大丈夫だと思っています。Netflixが5億8,700万ドルで映像制作のスタートアップを買っていたこと、Metaが2026年にAI基盤へ最大1,450億ドルを投じること、Anthropicが自社チップの設計を始めたこと。どれも本当に起きた出来事ですが、自分の現場で真似のしようがありません。規模の話は、規模を持っている人の宿題です。読んで面白くはあっても、来週の判断は動かないと思います。
■ もし決めるなら、ここだけ
もし一つだけ決めるなら、いまAIに任せている作業のうち「間違えたら取り返しがつかないもの」を一つだけ挙げて、そこにだけ人の承認を挟むことだと思います。全部を止める必要はありません。作業そのものを切り離しておく、触れてよい範囲を狭めておく、外に出ていく経路をあらかじめ決めておく、そして消したり送ったりする直前だけは必ず人が押す。この四つのうち、最後の一つを入れておくだけでも、起きうる事故の大半は手前で止まります。取り返しがつくものは、任せたまま学べばよいと考えています。
真似したいのは、その会社が出した数字でしょうか。それとも、事故のあとにその会社が変えた設計のほうでしょうか。
よろしければ、こちらから。安全性や情報の扱いなど、導入前に引っかかる点をまとめています。
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代表 鳴海貴慶
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