Officina Vitae

記録 アート 音楽 円卓 研究所 お問合せ
ログイン
← Back to all posts

QAILaboratory|海外大手を真似る前に、人が最終確認を残す一点を決める

Jul 02, 2026
Connect

おはようございます、QAILaboratoryの鳴海です。

今週、Samsungが社内全体にOpenAIのChatGPT EnterpriseとCodexを配備すると発表しました。英国のAI法律事務所Garfield AIは、書類作成をAI・法廷弁論を人が担う分担で、未払い金請求の裁判に勝ちました。中国のZ.aiは、最大100万トークンを扱えるオープンウェイトのモデル「GLM-5.2」を公開しています。

数字も規模も大きく、つい「うちも急いだほうが」と感じてしまいます。

■ 今週、目を留めておくとよさそうな一つ

一つ挙げるなら、Garfield AIの分担だと考えています。注目したいのは規模ではありません。書類作成はAIに任せ、法廷での主張は人が担う、という線が先に引かれていたことです。やっていることは単純で、任せていい作業と、自分の名前で責任を負う判断を、先に分けただけ。これは規模に関係なく、あなたの会社にもそのまま移せます。歯科でも会計でも、相手に最後に向き合うところは人が持ち、その手前の下ごしらえをAIに渡す、という順番です。分担は、規模が大きいから効くのではありません。どこまでをAIに任せ、どこからを自分の名前で引き受けるか。その線を一度だけ引いておけば、新しい事例が流れてきても、毎回ふりまわされずにすみます。

■ ほとんどは、追わなくて大丈夫

逆に、Samsungのような全社一斉の導入や、GLM-5.2の性能比較は、眺めるだけでよいと考えています。規模やスピードは、その会社の事情で動くもので、自社にそのまま当てはまるとは限りません。大きく見える事例ほど、真似ても自社の現場が同じように回るとは限らない。むしろ「すごい事例」を追うほど、自分の会社でまず何を変えるべきかが、かえって見えにくくなることもあります。

■ もし決めるなら、ここだけ

一つだけ決めるとしたら、自社の仕事の中で「ここから先は、必ず人が最後に確認する」と決める業務を、一つだけ選ぶことだと思います。社内向けの下書きはAIに任せても、お客様に出す見積もりや品質に関わる記録は、人が最後に目を通す、というように。全部を一度に決める必要はありません。まず一つ、いちばん外に出ていく仕事から。その業務では、出てきたものを「合っているか・抜けはないか・すれていないか・質は足りているか・偏っていないか」の五つの目で見ると、通してよいものと止めるべきものの差がはっきりします。

派手な事例は、来週もまたどこかから流れてきます。真似るより先に、自社で一つ、人が握る業務を決めておくほうが、たぶん長く効きます。今週は、それだけで十分かもしれません。

QAILaboratory
代表 鳴海貴慶

HP https://qailaboratory.narumitakayoshi.com
LinkedIn https://www.linkedin.com/in/takayoshi-narumi-9869a527a/
ブログ https://www.narumitakayoshi.com/blog/

返信

会話に参加する
t("newsletters.loading")
読み込み中...
QAILaboratory|「最強モデル」が入れ替わっても、急いで乗り換えなくていいと考えています
こんにちは、QAILaboratoryの鳴海です。 先週、中国のMoonshot AIが、オープンウェイトの大規模モデル「Kimi K3」を公表しました。フロントエンド開発を競うアリーナで、これまで上位だったClaude Fable 5を抜いて首位に立ちました。重みの一般公開は7月27日が予定されています。 最強のモデルが入れ替わった、という見出しを見ると、乗り換えを急がなければ、という気になります。ただ、順位が動いたことと、それがあなたの仕事に合うかどうかは、別の話だと思います。 ■ 今週、目を留めておくとよさそうな一つ 目を留めておいてよいと思うのは、個別の順位よりも、オープンなモデルが実務で使える水準に並び始めた、という潮目のほうです。これまでは「公開されているモデルは、いつも一歩遅れる」というのが暗黙の前提でした。その前提がひとつ崩れたことは、長い目で見ると効いてきます。特定...
今週、こんなものを書きました|AIと、ことばと、音楽
こんにちは。鳴海です。   今週、こんなものを書きました。   ■ 性能が良くても、使えなくなることがあります ― AIに規制が降りてきた月の記録   AI規制の動きから、性能だけでなく「使い続けられるか」と「誰が責任を負うか」を考えました。   https://www.narumitakayoshi.com/blog/ai-regulation-202606   ■ 静かに満ちていく|曲と歌詞   朝のこわばりから、名もない温度が呼吸とともに静かにひらいていくまでを描いた曲です。   https://www.narumitakayoshi.com/blog/song-shizuka-ni-michite-iku   ■ 一枚のコーヒー写真は、どこまで広告になるか ― 動画生成AIで確かめたこと   一枚の写真から、商品の形を守りながら短い広告映像をつくる過程を記録しました。   h...
QAILaboratory|AIに「大丈夫です」と言われて、安心していた話
こんにちは、QAILaboratoryの鳴海です。 彼女は、小さなヨガスタジオを一人で切り盛りしている。生徒の予約は、数年前に自分で作ったフォームで受け付けていた。その日の夕方、電車の中でスマホを眺めていると、あるニュース記事が目に留まった。海外のセキュリティ研究者が、AIを使ってチケット販売サイトの弱点を見つけたという。悪用すれば、無料でチケットを発行できたかもしれない、という話だった。彼女は画面をスクロールする手を止め、ふと自分の予約フォームのことを思い出した。 半年ほど前、忙しさに追われる中で、AIに一度だけ聞いたことがあった。「このフォーム、セキュリティ的に危ないところはないか見てもらえますか」と。返ってきた答えは、落ち着いた文章で、「特に大きな問題は見当たりません」というものだった。その言葉を読んで、彼女は肩の力が抜けたのを覚えている。以来、そのことは考えないようにしていた...

QAI Laboratory

現場視点で読み解く、生成AI×品質技術×業務最適化の実践知。AIの情報が多すぎる中で「今週どれを追い、どれは追わなくていいか」を、鳴海の視点でお届けします。生成AIを実務に活かしたい方へ。 毎週の配信: 月:AI全般 ― 今週の注目の動き 水:AIツール ― いま試す価値のあるもの 金:海外企業のAI活用 ― 事例と自社への活かし方 日:物語 ― 現場の一場面を描いた読み物

Officina Vitae

記録 円卓 研究所 お問合せ プライバシーポリシー X Facebook Spotify アート 音楽
© 2026 Takayoshi Narumi